CD「ニューシネマパラダイス」演奏曲目解説


1 ニューシネマパラダイス(映画「ニューシネマパラダイス」のテーマ曲)
  作曲は、イタリアを代表する映画音楽家であるエンリオ・モリコーネ。1989年公開の映画は、敗戦後のシチリア島の小さな映画館を舞台に、そこに通い詰めるトトことサルバトーレ少年と映写技師アルフレート(フィリップ・ノワレ)との友情を軸に、青春、恋、人生そして映画への熱い思いを描いた名作である。モリコーネのスコアは親密に映画に寄り添い、室内楽的な響きで、情感豊かなほのぼのとした雰囲気を与えている。この「愛のテーマ」の安らぎに満ちた響きは、最近の“癒し”系音楽の先駆的作品である。

2 ロミオとジュリエット(映画「ロミオとジュリエット」のテーマ曲)
 作曲は、モリコーネと並んでイタリアを代表する映画音楽家ニーノ・ロータ。フェデリーコ・フェリーニ作品や映画「ゴッドファザー」の主題曲で有名。150本以上の映画音楽を手がけ、中でも映画「道」や「太陽がいっぱい」など、その流麗な旋律美とペーソスは比類がない。1979年に68歳の生涯を惜しまれつつ閉じた。映画の原作は、もちろんシェークスピアの傑作悲劇。監督はフランコ・ゼフィレッリ。監督初のアメリカ、パラマウント映画で、その斬新なシェークスピア解釈に基づく演出と甘く切ないラブストーリーは、1968年公開当時の若者の圧倒的支持を獲得した。有名なメロディーは、映画の中で歌われる「青春とは何かWhat is Youth」という挿入歌である。

3 シェルブールの雨傘(映画「シェルブールの雨傘」のテーマ曲)
 作曲は、フランスの映画音楽家、ジャズピアニスト、アレンジャー等多くの顔を持つミッシェル・ルグラン。1964年公開のこの映画は、全編の台詞を歌詞として歌で表現しながら進めるレシタティヴ式のミュージカルで描くという名匠ジャック・ドゥミ監督による画期的な出世作である。ミシェル・ルグランの作曲の流麗なメロディーと、雨の港町に映える雨傘の色彩や風景などが見事にマッチし、観る者のロマンティシズムと哀愁の涙を誘う。主演は、2006年カンヌ映画祭審査委員長を務めた若き日のカトリーヌ・ドヌーブ。彼女の初々しい美しさも印象的で、仏・アルジェリア戦争で恋人と引き裂かれる、若く美しいヒロインを演じきり、ラストで流れるテーマ曲の最後で3度繰り返される「ジュテ―ム!」は、観る者の涙を誘った。1964年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。

4 シシリアーナ
 作曲者不詳。15世紀ごろの北イタリアのシチリアをうたった名曲。繰り返される素朴なメロディーは、哀愁を帯び、郷愁を誘う。シチリア島の沖の海に沈む真っ赤な太陽と強い潮風、漁に出る船人たちをオレンジ色に染める曙、この曲の「リフレイン」は、繰り返し岸壁を打つ優しく、ときに激しい「地中海の波」を思わせるシチリア賛歌の名曲。

5 スターダスト
 作曲は、アメリカのピアニスト、シンガー、TVやラジオのパーソナリティとしても活躍したホーギー・カーマイケル。初めて歌詞付きで歌ったのは、1931年のサッチモことルイ・アーム・ストロング。ヴィブラホン奏者ライオネル・ハンプトンの名演は1941年。ナット・キング・コール、サラ・ボーン、ドリス・デイ、カーメン・マクレアなどのビッグ歌手に歌い継がれ、ジャズのスタンダードナンバーとして不動の位置を占めている。別れる恋人に捧げられた至高の名曲である。

6 鈴懸の径
 灰田勝彦がワルツのテンポで歌ったのが原曲。鈴木章治とリズムエースがスイングにアレンジして演奏し、60年代大ヒットとなった日本を代表するジャズのスタンダード。
2番目の主旋律のあとの村瀬のテナー・サックスのアドリブは、日本的で好感が持てる。

7 どうぞこのまま
 丸山圭子作詞、作曲、歌で、1976年の大ヒット曲。この曲は、雨をテーマにした水っぽさ、声の質、淡々とした歌い方、バックのグッと押さえた雰囲気と正統派ボサノバリズムの絶品である。村瀬のテナー・サックスが、濡れた情感を抑えて演奏し、素晴らしいボサノバ・ジャズとなっている。

8 あの日に帰りたい
 作詞・作曲、歌は荒井由美。1970年代を通じ「ニューミュージック」の名曲で、現在でも歌い継がれる大ヒット曲。「青春の後姿を 人はみな忘れてしまう」の歌詞は、歌う人、聴く人を、皆、甘く切ない自分だけの青春時代にもう一度誘ってくれる。

9 ヨハン・セバスチアン・バッハ メロディー ・ 主よ 人の望みの喜びよ
(バッハ 管弦楽組曲第3番 アリアより)・(バッハ カンタータ第147番より)
 編曲されて「G線上のアリア」で有名なJ.S.バッハの最もポピュラーな名曲。聴く人すべてが静かに耳を傾けるといわれる元祖「癒しの名曲」。管弦楽組曲は、バッハがケーテン時代に作曲した管弦楽のための組曲で、2番が最も有名だが、組曲中で1曲選ぶとすれば、この第3番第2楽章アリアであろう。瞑想的で透明感が高く、今も多くのアレンジを生んでいる。ここでは、村瀬のサックスが甘く、切なく、繊細に歌う。
 アリアに続いて始まる、落ち着いた心にしみるメロディーは、バッハの最も人気のあるカンタータ第147番の中の第6曲目と第10曲目にある「主よ、人の望みの喜びよ」である。この曲こそバッハが精魂込めた一曲ではないかと思われるほど重厚で情緒豊かであり、この曲を聴いて感動しない人はいないと言われ、特に日本人には親しみやすい。

10 バット ノット フォー ミィー
 1930年初演のミュージカル「ガール・クレージー」の挿入歌として、ジョージ・ガーシュイン作曲、兄アイラ・ガーシュイン作詞のジャズのスタンダード。当時フレッド・アスティアとよく映画で共演した金髪美人女優ジンジャー・ロジャースが唄った。その後、大勢の歌手に歌われている名曲。イタリア映画「ジンジャーとフレッド」は、この二人をモデルにイタリアの世界的監督フェデリコ・フェリーによって映画化された。

11 エンブレイサブル ユー
 同じくジョージ・ガーシュイン兄弟による1930年初演のミュージカル「ガール・クレージー」の挿入歌。実際はその2年前、上演されなかった「イーストイズウエスト」中の曲として書かれていた。日本語で「あなたを抱きしめて」の歌詞は、男性か女性かによって歌の内容が微妙に異なってくるバラードの名曲。代表格はフランク・シナトラとクリス・コナーだろう。それぞれジャズボーカルの一頂点といえる傑作のひとつで、甘さを配した絶唱が聞かれる。他にクリフォード・ブラウンと共演したサラ・ボーン、ライブ録音のメル・トーメも素晴らしい。インストゥルメンタルでは何と言ってもチャーリー・パーカーが最高。絶頂期の1947年にマイルス・デイヴィスやマックス・ローチを従えニューヨークで録音されたバージョンは、バラード奏法の絶品。

12 ある愛の詩
映画「ある愛の詩」は、1970年公開当時、一世を風靡したアーサー・ヒラー監督の恋愛映画の名作。「愛とは決して後悔しないこと」は、映画のラストの有名な台詞。作曲は、「男と女」、「白い恋人たち」などの仏のクロード・ルルーシュ監督とコンビの映画音楽家のフランシス・レイ。    レイなくしてルルーシュはいないと言われた名映画音楽家の傑作のひとつ。

13 ウエイブ
アントニオ・カルロス・ジョビン作曲のあまりにも有名なボサ・ノバの名曲。ウエイブは、誰もが一度耳にした事のある曲だろう。この曲は「究極のイージー・リスニング」と呼ばれ、そのサウンドは、流れるような快感が体を走る至福の一刻を贈ってくれる。

14 虹の彼方に
 1939年公開のミュージカル映画「オズの魔法使い」のテーマ曲にして、永遠の名曲「オーヴァー・ザ・レインボウ」。主演のジュディー・ガーランドが映画の中で歌うこの歌はあまりにも有名。多くの歌手によってカバーされ、ジャズにもミュージカルにもアレンジされるのは、この曲が完璧なメロディーとリズムを持つ名曲の証であるといわれている。ここでの村瀬のサックスは、落ち着いた大人のジャズをベースに静かにそっと語りかけ、聴く人すべてに明日への希望を胸に抱かせ、夢心地にさせる。

15 ザ マン アイ ラブ
 アイラ・ガーシュイン、ジョージ・ガーシュイン兄弟の作詞・作曲による1924年初演のミュージカル「レディー・ビー・グッド」のために作ったのが、最初はヒットせず、後でミュージカル「ストライク・アップ・ザ・バンド」で唄われ、大ヒットしたジャズのスタンダードの名曲。ジョージ・ガーシュインが偉大なところは、クラッシクの世界を究め、誰もなしえなかったジャズとの融合を成し遂げ、「ラプソディー・イン・ブルー」や「ポギーとべス」のような格調高い作品を残しつつ、今日スタンダードとして残る歌を同時に書いたことである。ジャズの世界に、ガーシュインが遺した歌曲がなかったら、さぞ寂しいものになったことだろう。
この曲も日本では「私の彼氏」と訳され、多くのジャズ歌手にカバーされている。タッチが温かくメロディアスで、趣味のいい、味わいのあるジャズの名曲。

16 ファイブ スポット アフター ダーク
 カーティス・フラーのトロンボーンをフィーチャーしたテナー・サックス奏者ベニ―・ゴルソン作曲のジャズの傑作。1958年録音。スタンダードを超えた人気を誇る。「ファイブスポット」とは、ニューヨークにある有名なジャズスポットの名前。仕事が終わる5時からの癒しの場所。「夕闇せまるファイブスポット」でジャズを聴きたくなるような、素敵な気分になる名曲。有名な導入部のメロディーを村瀬のサックスは、多重録音してユニゾンで聞かせ、原曲を髣髴とさせる。

17 サムワン トゥ ウォッチ オーバー ミィー
 1926年ジョージ・ガーシュイン作曲、兄アイラ・ガーシュイン作詞のジャズのスタンダードの名曲。ジャズの名曲50選の中でも常に上位10曲の中にランクインする人気曲。クラシックで鍛えたガーシュインの作風は、歌曲のメロディ・ラインにも影響を与え、独特の起伏がある。これが後年多くのジャズメンに彼の歌曲が素材として取り上げられる結果を生んだ。この曲もメロディ・ラインのコード進行のユニークさが大いに面白がられたのである。小粋で、ややセンチメンタルなガーシュイン・タッチをよく身につけたこの曲は、時代を超えて生き続ける永遠のスタンダードである。

18 イパネマの娘
 ヴィニシウス・ヂ・モライス作詞・アントニオ・カルロス・ジョビン作曲の1963年ボサ・ノバを世界に知らしめた大ヒット曲。リオの南側にある美しい砂浜のイパネマ海岸にあるバー”ヴェローゾ“にいつもたむろしていた二人の前をただ通り過ぎていく、美少女エロイーザの姿を心に描いてつくった曲。驚くような転調を繰り替えしながら展開していくメロディー。海岸を歩く美しい少女と、自分の孤独感を対比させたヴィニシウスの歌詞。この曲はジョビンとヴィニシウスが共作した最後の作品で、ボサ・ノバの金字塔。スタン・ゲッツのテナー・サックスにのって歌うアストラッド・ジルベルトの抑揚を押さえ、ささやくような気だるい唱法は、世界を魅了した。

19 ツナミ
 桑田佳祐作詞・作曲の2000年の大ヒット曲。桑田啓佑とサザンオールスターズにとっても最高のラブソング。この曲を聴く若者、いや中高年も、世代を超えて多くの人が、哀しい思い出の過去の悲恋、現在、未来の恋を想って心から泣ける。津波のような雨を浴び、津波のような涙で、濡れる、愛される、癒される快感。ジャパンポップスの傑作。

20 バイバイ ブラックバード
 モート・ディクソン作詞、レイ・ヘンダーソン作曲で1926年の歴史的名曲。ブラックバードは、「黒い鳥」ではなく、「黒鳥」(正式にはクロウタドリ)で、「白鳥」のように鳥の種類を表している。多くの歌手に歌われジャズのスタンダードとなったのは、1956年6月、トランペッターのマイルス・デイヴィスが演奏したからといわれている。マイルスのダンディーでミュートな演奏は、ブラックバードをブルーバードに変えたのだ。
あなたに贈るラストソングは、幸福運ぶ伝書鳩。ほんの少しでも慰めになれたら幸いです。

||BACK||